時代の変遷とともに学校をとりまく周辺環境、あるいは児童の家庭環境も大きく変わり、自ずと求められる小学校の機能も変わった。しかし日本の小学校の多くは今も変わらずRC造片廊下型平面の建築躯体を用い、かつての教育プログラムを踏襲し、上記の環境の変化へ適応していないのが現状である。本計画では、そのような日本の硬直した小学校教育制度に一石を投じる試みである。計画に際し、これまで国内外で構想されてきた低・高学年分離型の小学校運営制度をとりあげる。具体的には学校の実態利用調査や教育学専門家へのヒアリングを行いながら、小学校を「前期校」と「後期校」によって運営するプログラムを構築する。低学年児は運動能力も低く、教室の中、あるいはその近傍において、いかに多くのアクティビティをアフォードできるかということから、小さなスケールの空間で隣の集団や上下の学年との連携教育がしっかりつくれる家のような教室が集まった前期校を計画する。高学年児は専門教科も増えるため、常に教科毎に教室を渡り歩くような活動様式をとっていることや、委員会やクラブ活動など自分たちで学校を運営していく能力が身に付いていることから、学校内の動線空間を巡りながら様々な諸室を活用して学習できる「まちのような後期校」を計画する。以上のような考察を中心に、新しい小学校の姿を提案する。