5-1.性能評価の結果(アンカーピンの耐力に関する性能試験) |
本工法は外装タイル張り仕上層を樹脂被膜で一体化しアンカーピンで躯体に留めつける工法である。ここではアンカーピンが外装タイル張り仕上層とエバーガード工法の合計自重を保持する為の耐力について性能評価を行なった。
5-1-1 アンカーピンの引抜耐力
5-1-2 モルタル部に対するアンカーピン頭部の保持力
5-1-3 アンカーピンの単体せん断耐力 |
5-1-1 アンカーピンの引抜耐力
<試験方法>
独立行政法人都市再生機構、外壁複合補修工法(狭小部)「都市機構性能規定」における試験方法に準じてアンカーピンの引抜耐力を確認する。
(1)試験体
JIS A 5371「プレキャスト無筋コンクリート製品」の附属書2に規定する普通平板N−300(コンクリート圧縮強度34.2N/平方mm)を下地とする。
アンカーピンはダブルロックアンカー50mmを使用。
(2)試験
普通平板N−300に6.6mm径のドリルビットと振動ドリルを用いて深さ25mmまで穿孔する。埃を除去後、ハンマーと専用打ち込み棒を用いてダブルロックアンカーを打ち込み、専用冶具取り付け後に引張試験機を用いて最大荷重を測定する。
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試 験 機:インストロン4482
ロードセル:5kN
クロスヘッドスピード:5mm/min |
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5-1-2 モルタル部に対するアンカーピン頭部の保持力
<試験方法>
建設技術評価規定に基づく平成7年度建設省告示第1860号の「外壁複合改修構工法の開発」に準じた引抜試験を行い、モルタルに対するアンカーピンの頭部引抜耐力を確認する。
(1)試験体
JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準じて作製したモルタル板(300×300×25)を下地とし、アンカーピンを打ち込む。
アンカーピンはダブルロックアンカー50mmを使用する。
(2)試験
アンカーピン脚部に冶具を取り付けて、日本建築仕上学会認定油圧式引張試験機を用いてモルタル板裏面よりアンカーピンを引張り、最大荷重を測定する。

図5.1.1 油圧式引張試験機
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5-1-3 アンカーピンの単体せん断耐力
<試験方法>
専用せん断冶具を用いてアンカーピンにせん断荷重を加え、単体せん断耐力を確認する。
(1)試験体
アンカーピンはダブルロックアンカー50mmを使用する
(2)試験
専用冶具と引張試験機を用いて最大荷重を測定する。

図5.1.3 試験機及び試験治具 |
5-1-4 試験結果
表5.1.1 アンカーピンの引抜耐力試験結果
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最大荷重[N] |
試験体状況 |
試験体(1) |
2,620 |
コンクリート板コーン破壊 |
試験体(2) |
2,970 |
コンクリート板コーン破壊 |
試験体(3) |
2,501 |
コンクリート板コーン破壊 |
試験体(4) |
2,855 |
コンクリート板コーン破壊 |
試験体(5) |
2,737 |
コンクリート板コーン破壊 |
平均 |
2,737 |
− |
σ |
185.5
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− |
平均−3σ |
2,181
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− |
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表5.1.2 モルタル部に対するアンカーピン頭部の保持力試験結果
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最大荷重[N] |
試験体状況 |
試験体(1) |
2,180 |
アンカーピン抜け |
試験体(2) |
2,330 |
アンカーピン抜け |
試験体(3) |
2,470 |
アンカーピン抜け |
試験体(4) |
2,070 |
アンカーピン抜け |
試験体(5) |
2,460 |
アンカーピン抜け |
平均 |
2,302 |
− |
σ |
175.1 |
− |
平均−3σ |
1,777 |
− |
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表5.1.3 アンカーピンの単体せん断耐力試験結果
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最大荷重[N] |
試験体状況 |
試験体(1) |
14,970 |
アンカーピン破断 |
試験体(2) |
15,500 |
アンカーピン破断 |
試験体(3) |
14,500 |
アンカーピン破断 |
試験体(4) |
14,800 |
アンカーピン破断 |
試験体(5) |
14,500 |
アンカーピン破断 |
平均 |
14,854 |
− |
σ |
413.6
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− |
平均−3σ |
13,613
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− |
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■まとめ
・「5-1-1アンカーピンの引抜耐力」は、コンクリートに打ち込んだアンカーピン1本あたりの引抜耐力は平均
で2,737N、−3σ限界で2,181Nであった。
・「5-1-2モルタル部に対するアンカーピン頭部の保持力」において、モルタル部に打ち込まれたアンカーピン
1本あたりの引抜き強度は平均で2,302N、−3σ限界で1,777Nであった。
・5-1-1、5-1-2の結果より、面外方向に外力がかかった場合、数値(−3σ限界)の低いアンカーピンの頭部から
抜けることが予想される為、今後面外方向の外力に対する評価はアンカーピンの頭部保持力の数値を用いる。
・「5-1-3アンカーピンの単体せん断耐力」においてアンカーピン単体のせん断耐力は平均14,854N、−3σ限界
で13,613Nであった。
アンカーピンは1平方mあたり4本打ち込む仕様になっていることから、13,613N×4本/平方m=54,452N/平方mとなり、
せん断耐力は4-5-1(32頁)で仮定する外装タイル張り仕上層にエバーガード工法を加えた自重(873N/平方m)を十分
上回る。
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