報告

JIAトーク2021 『からだが語り得ること ─コンテンポラリーダンスの現在から─』(ダンサー・振付家、信州大学人文学部准教授 北村明子氏)

報 告REPORT

JIAトーク2019 Vol.179

講師:北村明子 氏(ダンサー、振付家、信州大学人文学部准教授)

日程:2021511日(火)

場所:zoomによるオンライン開催

<からだが語り得ること コンテンポラリーダンスの現在から

圧倒的な熱量」。

初のオンライン開催となった今回のJIAトーク、
zoomの画面越しからでも、そう感じた方が多かったのではないだろうか。
コンテンポラリーダンスは、多くのクラッシック・バレエ等とは違い、予め想定されている、わかりやすい物語は想定されていないことが多い。そのうえ、表現は身体とそれをサポートするもの(舞台装置、映像、音楽)に限られるから、その解釈はそれぞれの感じ方に委ねられる。
そのある意味<つかまえにくいもの>をどう生み出しているのか?
そんなコンテンポラリーダンスにとっては、初めから設定されていたような根源的な問いに、本当にたくさんの言葉を重ねながら応えていただいた2時間あまりだったように思う。

自然な偶然に導かれて、私が最初にレニ・バッソの公演を拝見したのが四半世紀ほど前。その時のとにかく格好良く、強烈なインパクトで北村さんのお名前を記憶していた(当時は北村さん、早稲田大学の大学院生だった)。
それからトークでもお話しがあったように、北村さんは文化庁の派遣でベルリンの地を踏む。なぜ欧州ダンスシーンの中でもとりわけ活動が盛んだったとは言えなかった時期にベルリンを選んだのか、という理由にD・リベスキンドの建築も挙げながら、壁が崩壊した後のベルリンという街に惹かれたと。
スタジオに赴き、ダンスに向き合うけれども、とにかくみな時間をかけて議論をする。その様子に驚きつつも言葉を重ねて考えて行くことの面白さが、街の空気感と共に刻まれていったという。
後に異国へのフィールドワークから作品作りを続けることになる土壌は、このとき場の力と向き合うことで、既に芽生えていたのかも知れない。

帰国後、レニ・バッソでの作品づくりには<グリッドシステム>が振り付けの一手法として試みられたという。当時の振り付けメモも映し出され、マトリックスのなかでダンサー達の動きをどうコントロールしていくのかの一例としながらも「多様(自由)すぎて」と。

空間を躍動する身体の動きをデザインするのが振付家の役割なのだとすると、その動きをつかまえる(制限する)手段を探すことこそがきっとデザインのモティーフとなるのだろう。
北村さんは、自身がこの世界と向き合うときに感じる<違和感>について、冒頭で時間を割いて話された。接触に対して過敏に感じていたこと、苦手な仕草があること、楽器を演奏するときの身体って
きっと多くの人にとっては、さらっと通過してしまうことなのかも知れないけれど、研ぎ澄まされた感覚のなかでは、それらは終わらない「問い」となり、それについて考えていくことがモティーフとなっていったであろうことが伝わってきた。
身体の接触に過敏なゆえに武術(インドネシアの伝統武術、プンチャック・シラット)への興味が増したのか

一見逆説的に聞こえるかも知れないけれど、武術は緻密なルールの上に相手との距離感が設定される。つまり、そこには接触に対する細分化されたメソッドがあるということ。
FINKS』では、武術の動きと、ダンサーの身体をリアルタイムで捉えたカメラ映像が、あらかじめ仕込まれた映像とオーバーレイしながら展開していくスリリングな作品。
そこではスピーディーな<間合い>がダンサー同士の接触をコントロールしていく印象を受ける。

FINKShttps://youtu.be/i93IQxU8Wmk

いっぽうで、ドイツからの委嘱作品として制作された『ghostly round』では、<外から見た日本>がテーマとなっている。日本で日常的に行われる所作(おじぎなど)が変容していくようなコミカルなパートもあるけれど、圧倒的に印象に残るのは秘められたるものの持つ静かな<畏れ>のようなもの。この日の北村さんの言葉のなかには「幽霊(ゴースト)」というキーワードが頻繁に使われた。そして「幽霊」はいつも身体の周りにあって、それゆえダンスもいつも周りにある(みつけられる)ものなのだと。それは、字義通りの「幽霊」というよりは、空間に満ちている<気>の状態にも近いように感じた。

ghostly roundhttps://youtu.be/7RVEWufEPiM

これらの作品で世界ツアーを敢行する年月を経た後に、カンパニーを解散。
北村さんの活動はプロジェクトベースのソロ活動へと移行する。

「土地の記憶を作品の中に入れたかった」

最初はプンチャック・シラットの本場である事が大きかったという理由でインドネシアへのフィールドリサーチへと向かう。口頭伝承されてきた武術の指南を受けつつ、彼の地の儀礼、祈り、音楽などへの文化人類学的な踏み込みをしていく。そして、現地のダンサー達との交流から、制作するダンス作品でのコラボレーションが試みられる。それで生まれたのが『To Belong』の連作だ。

To Belong』(http://www.akikokitamura.com/tobelong/

インドネシアからスタートしたリサーチは、その後カンボジア、ミャンマー、インドへと何年もかけて続き、その度にダンス作品が生み出されていく。
文化の差異が生み出すもの、踏み込んで取り込めるもの、そして、外から改めて感じる日本。

「土地の記憶を作品の中に入れたかった」という北村さんは、長年かけてグランドツアーをするようにアジアとの対話を繰り返し、今はアイルランドの文化と向き合っている。

今年の年明けのこと、公演直前に発出された緊急事態宣言の影響で、観客を迎えての新作公演は中止されたが、映像作品が世に残った。そして、アイルランドとの邂逅はこれからも続いていくそうだ。

ECHOES OF CALLING
http://akikokitamura.com/works/echoes_of_calling_202101/

「新薬を作っているような感覚がある」

「予測を超えていくことをダンスにいれたい」と語る北村さん。そのためには、それを見つける<観察者>の視点(この日の発言にも「意味に縛られない身体の動きに立ち会いたい」と)
と同時に、身体の常識を揺さぶるための実験的な試みが必要とされる。
だから「新薬を作っているような感覚がある」という言葉に繋がってくるのだ。

生み出し、検証し、効果を確認する。
そんな新薬発見の旅は、きっとこれからもずっと続いていくことだろう。

「身体って空間なんです」

質疑回答で印象に残ったのは
「身体の大きさと、地球の重力は普遍だから、過去をリファレンスできるのは建築と共通するのでは」という聴講者のコメント後に、内部空間と外部空間についてどう考えるか、という質問があった。それに対しての北村さんの言葉を最後に記しておきたい。

「身体って空間なんです。身体の内部に降りていくことができるか」

JIAトーク委員 廣部剛司)

 

概 要OUTLINE

「JIAトーク」の2021年度、第1回目として、ダンサー・振付家、信州大学人文学部准教授の北村明子氏をお招きして、からだが語り得ること─コンテンポラリーダンスの現在から─」をテーマにお話をお聞きします。奮ってご参加ください。

詳細情報DETAIL

開催日
2021年5月11日(火)
時 間
18:00-20:00
会 場

オンライン配信(Zoom)

講 師
北村明子氏(ダンサー・振付家、信州大学人文学部准教授)
参加対象者
どなたでも参加できます
(申し込みフォームより事前申込をお願いします)
参加費
無料
定 員
300名(先着順 ※定員に達し次第申込締切)
CPD
CPD2単位(申請中)
問合せ先
JIA関東甲信越支部 TEL: 03-3408-8291 メール talk@jia.or.jp
申込方法

下記申し込みフォームよりお申し込みください。
※当日の参加に必要な Zoomアドレスは、開催日前日までにメールにてお知らせいたします。

https://forms.gle/u6BjXDjko4rCsTkG7

主 催
JIA関東甲信越支部 JIAトーク実行委員会
協 賛
日新工業株式会社、日本アスファルト防水工業協同組合