地域環境の経験への適応

-宇都宮市近郊における農業倉庫のリユースと地域共用空間の構築-
氏名
山口颯太
所属
宇都宮大学大学院
地域創生科学研究科 社会デザイン科学専攻
研究室
遠藤康一研究室
作品概要

 栃木県宇都宮市近郊には、農協が保有・管理する大谷石造の農業倉庫が各所に残り、米穀や農機具を保管する石蔵や下屋,米検査のための庇下空間といった構成要素を伴いつつ建ち現れ、通り沿いの景観を特徴づける要素となる。一方で、それらは農業の拠点の一つでありつつ、庇下空間などの一部が地域の活動に使用される等、かつてはこのような活動と場所の関係により形成される地域拠点が分散的に存在し、それらが相互に連携した地域環境が成立していた。
 現在では近代化による産業拠点の移り変わりから、農業倉庫への関わりが薄れ、これは、生業の後継者不足や少子高齢化等による地域活動の縮退や空間資源の不活性化といった都市郊外に共通する課題といえる。これに対し、空間資源のリユース及び地域活動と場所の関係を捉え、現代の拠点として新たに位置付ける方法の検討は、記憶を引き継ぎつつ地域の持続的な展開を構想する上で重要なテーマと考えられる。
 本研究では、宇都宮市近郊の農業倉庫を対象に、形態的特徴や敷地内構成と周辺環境の配列からその建ち現れ方を明らかにすると共に、農業倉庫を含む地域拠点と活動の関係から地域環境の構造を捉えた。さらに、資源を共同で運営・管理する地域共用空間の構築による地域環境の経験への適応手法を考案した。
 場所性を適切な照準で捉え共有すること、そして、空間と活動の相補的な関係を生みだすことが持続的な地域環境を構築すると考えられる。

作品イメージ

Profile

略歴

2023年 宇都宮大学地域デザイン科学部建築都市デザイン学科 卒業

2025年 宇都宮大学大学院地域創生科学研究科社会デザイン科学専攻修了