空間深度の研究

―曲線による終わりのない空間―
氏名
加藤千尋
所属
東京工芸大学大学院
工学研究科 工学専攻 建築デザイン分野
研究室
建築設計計画 II(田村裕希)研究室
作品概要

街を歩いていると不意に、引き込まれるような深度を感じる空間に出会うことがある。偶然迷い込んだ路地には、建築単体ではつくることのできない生活の重なりを見出すことができる。深度は、時間の蓄積が折り重なる意図無き風景だけでなく、風景に溶け込む美しい曲面ガラスの反射や幾何学的なフォルムといった建築との関係にも見出すことができる。本研究は、建築や風景に特別な魅力を与える空間の深さを「空間深度」と名付け、特に「曲線」に着目して建築デザインにおける位置づけや効果の変化を多角的に分析するものである。
分析から「見えない奥がつくる視覚的深度」について「終わらない空間」のダイヤグラムを作成し、東京都渋谷区千駄ヶ谷の5差路の角地で、2つの建築を展開する。1つは曲線分析の結果を反映した、奥の空間を想像させる視覚的に「終わりのない空間」である。敷地のリサーチを進めると、鳩森神社にある富士塚は、「富士山の体験の写し」としてつくられた空間であり、東京に点在する「空間体験のハブ」の存在が、空間深度が視覚的なものに留まらないことを示唆していた。
もう1つの建築では、床や壁、屋根といったエレメントを次の空間へとスライドさせ、「常に空間がほどけている」ことによる終わりのない空間を提案する。
空間を終わらせず、視線や想像を、敷地を超えて、土地の文脈や歴史と接続する。場所の魅力を体験へ還元する空間への手がかりとなった。

作品イメージ

Profile

略歴

2000年 神奈川県横浜市生まれ

2023年 東京工芸大学 工学部 工学科 建築コース 卒業

2025年 東京工芸大学大学院 工学研究科工学専攻 建築デザイン分野 修了