メディアとしての窓

―窓の輪郭線に着目した空間の媒介方法に関する考察および設計提案
氏名
松野駿平
所属
日本大学大学院
理工学研究科 建築学専攻
研究室
古澤大輔研究室
作品概要

絵画、写真、映画、演劇、また建築などの視覚芸術において、フレームの果たす役割は大きい。それは額縁、ファインダー、ベゼル、プロセニアム、そして窓というかたちをとって、日常から切り分けられた独自の世界をその内側に表象してきた。遊離した世界は、あらゆる解釈を受けとめて、私たちの怠惰な目にも新たな視野を与えてくれるのである。フレームとは、世界を仲立つメディアであった。なかでも建築の窓は、内部と外部を行き来できることにその特異点がある。窓は2つの世界に跨りながらしかしどちらにも属さず、それはなにかを明かすように他の多くを隠している。その孔は垂壁・腰壁・袖壁の集まりであるがそのどれでもなくて、それでいて、非断定なままに彷徨うものでもない。窓はときおり、流れる出来事のただひとつを印象的に映し出すのだ。窓のかたちで眺められたものは実に興味に満ちていて、存在はしているのに見過ごされてきたものが、つづく経験のなかでふと世界から際立つのである。
私たちは慣習となった日々の生活のなかで、見ることの受動性が、ものごとへの感覚を鈍らせてしまうことがある。本研究はそうした流れの只中で、人びとの知覚を長引かせようと試みるものである。窓を空間の媒介装置として捉え直すことからはじまる窓が統べる造形試行の考察を通じて、目の慣習をかき乱し、ふたたび世界が新鮮にまなざされるような建築を示したい。

作品イメージ

Profile

略歴

2023年 日本大学理工学部建築学科 卒業

2025年 日本大学大学院理工学研究科建築学専攻 修了