「運動的本質」を呼び起こす建築
- 氏名
- 野田理裟
- 所属
- 日本女子大学大学院
家政学研究科 住居学専攻 - 研究室
- 宮晶子研究室
- 作品概要
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何かをしなければならないなどという受動的な運動には、目的が先行し空間に意識が向かず身体と空間との乖離を感じる。一方、こっちに行ってみたいなどの能動的な運動を行うことができる場所には身体と空間が結びつく感覚がある。そして、これらの行動の手前には機能や用途を超えた無意識に働きかけるものがあるのではないかと考える。哲学者メルロ=ポンティは『知覚の現象学』の中で、私たちが空間に対しまなざしを向けると知覚と運動が一つになったシステムが働くと述べており、まなざしから手掛かりを得て「運動的本質」によって運動が喚起され場所からの応答を受け取るとある。この「運動的本質」が働くためには、エッジの質と感覚の厚みが大切なのではないかと考え、建築空間について分析しその構成要素をもとに新宿御苑の庭園に本屋の提案を行う。分析の結果、立体の側面を感じること・3つの領域の連なりを経験すること・道筋を頭の中で描くこと・曲面の壁が大切であり、それらの経験がセミラティス状に結ばれるように、3つの領域の連なりを他の連なりと共有させながら構成した。「運動的本質」によって運動が誘発され、その中で得た経験を結びつけていくことで、身体と空間が結ばれたと感じる建築を目指した。人々の無意識に働きかける運動的本質を持つ空間により、豊かな出会いが自然と生まれ人々の心を豊かにする体験となることを期待する。
Profile

略歴
2023年 日本女子大学 家政学部 住居学科 居住環境デザイン専攻卒業
2025年 日本女子大学大学院 家政学研究科 住居学専攻修了