アプリケ・アップデーティング
極薄空間の増設による旧城下町での伝統産業の継承と現代生活への適応- 氏名
- 黒川ひなた
- 所属
- 日本工業大学
工学研究科 建築デザイン学専攻 - 研究室
- 吉村研究室
- 作品概要
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旧城下町には、間口の狭い町割や町家・蔵といった伝統的な建物が残る一方、維持や建て替えの難しさから、現代の生活と調和しにくい課題がある。本計画では、大規模修繕や建て替えではなく、既存建築に極薄空間を増設することで、地域の活性化を図る手法を提案した。これを「アプリケ・アップデーティング」と名付け、茨城県結城市の旧城下町を対象に検証を行った。結城紬は、この地域の伝統産業として継承されてきたが、生産工程の複雑さや後継者不足、観光資源としての活用の難しさが課題となっている。また、旧城下町の建物では、居住者と業種が固定される傾向にあるため、施設の新規参入が難しく、現代的な生活の在り方から遠ざけられている。そこで、伝統産業の継承と現代生活の適応を促すため、徒歩での利用を前提とした二つの通りを対象に計画を行った。「伝統産業を体験する通り」では、既存の町家や事業所の一角に売店や作業場の見学スペースを設け、小規模な博物館のような通りをつくる。職人・住民・観光客が交流する場をつくることで、結城紬の継承を支援する。「現代生活に適応する通り」では、駐車場や既存の隙間空間に屋根付き広場や通りから使う設備の空間や、暮らしを支える設備装置を増設し、住民が立ち寄るための小さなサードプレイスをつくる。本計画は、歴史的町並みの保存と生活の利便性向上の両立を目指すものであり、旧城下町における新たな活性化の可能性を示した。
Profile

略歴
2001年 栃木県小山市生まれ
2023年 日本工業大学建築学部建築学科 卒業
2025年 日本工業大学大学院 工学研究科 建築デザイン学専攻 修了