Boudoir

氏名
森野和泉
所属
東京芸術大学大学院
美術研究科 建築設計専攻
研究室
中山英之研究室
作品概要

建築においてクローゼットは、ときに寝室よりもプライバシーが高く、秘匿されるべき場所として位置づけられる。一方で、その中に収められているものは衣装だったり化粧道具だったり、個人の社会的表象を形成するための外皮である。すなわち、クローゼットという場所は他者の視線から逃れながらも、内側ではその視線を欲望しているという二律背反の意味をもつ。そしてクローゼットの前身であるBoudoirはかつて貴婦人の引きこもり部屋として用いられたと同時に、貴族文化が花開いた中心舞台であった。そこは洞窟のように仄暗く秘めやかであり、床から天井までファブリックで柔らかくカルトナージュされ、鏡により無限に増幅された室内装飾と肉体が綾をなす陶酔の空間だった。この魅惑のイメージを手掛かりに、作者自身が実際に引きこもっていた実家をBoudoirとして表現する。
そもそもBoudoirは住宅の中で最も奥に匿われた宝物庫であり、密談を行う場で、パブリック空間から関係性をより私的な深みへと導くための空間装置であった。たしかに秘密というのは暴露されることで他者とより親密な関係を築くことができるし、打ち明けずとも、公然の目に触れる場所で自分だけがその物事の真意を知っている愉悦は秘密を宝物にする。そのようなことを考えつつ、個人的なことが公共性と接続する可能性の検証を試みる。

作品イメージ

Profile

略歴

1997年 生まれ

2021年 日本大学理工学部建築学科卒

2025年 東京藝術大学大学院建築専攻卒