心の故郷に戻る

〜福島第一原発立入禁止区域の次世代へ〜
氏名
山本祐子
所属
千葉大学院
園芸学研究科 環境園芸学専攻
研究室
庭園デザイン研究室
作品概要

 2011年、福島第一原発の事故により、福島県全域に放射能が降り注いだ。除染作業で発生した約1,330万m3もの汚染土壌は、原発が位置する双葉町と大熊町に運び込まれた。そして、土壌貯蔵施設の建設によって、森や田畑は消え、かつての自然豊かな大熊町の風景は失われた。汚染土壌を保管するエリアは少なくとも2045年まで立ち入ることはできないとされ、人々は今でも故郷へ帰ることができない。
そこで、現在負の遺産として扱われ、隠すように貯蔵されている汚染土壌の処理プロセス可視化し、風景として見せるメモリアルを提案する。手法として、ブラウンフィールド再生の技術を導入することで、①人が安全に立ち入れること、②汚染土壌の浄化過程を風景と見せることを可能にしている。この場所は、原発事故を知らない次世代の人々に放射能汚染の深刻さを伝えると共に、この場所で暮らしていた人々が訪れ、故郷を偲ぶことができるメモリアルとして機能する。
本提案は、2045年までに福島県外で汚染土壌を最終処分するという政府の発表に対し、現在の福島県内の汚染土壌貯蔵施設で土壌を最終処分するという異論を述べている。しかし、汚染土壌に対する社会の消極的な風潮や二次汚染の懸念などにより、現時点で最終処分先が決まっていない厳しい現在の状況において、本提案が今後の汚染土壌最終処分問題の解決に対し、何らかの手助けになることを信じている。

作品イメージ

Profile

略歴

1998年 兵庫県生まれ

2021年 奈良女子大学 生活環境学部 住環境学科卒業

2024年 中国 清華大学 建築学院 風景園林学学科 修了

2025年 千葉大学大学院 園芸学研究科 環境園芸学専攻 修了