小河内ダム長寿命化計画

氏名
一色珠緒
所属
昭和女子大学大学院
生活機構研究科 環境デザイン研究専攻
研究室
森部康司研究室
作品概要

 多くの利益をもたらしてきたダムは、生態系破壊や集落の水没といった負の背景を抱えている。現在、老朽化や堆砂問題で機能を果たせなくなり、負の遺産となる可能性に直面している。本設計では、対象のダムを多摩川の小河内ダムに設定し、ダム長寿命化のあり方として提案した。水質改善、堆砂対策を切り口に、下方に穴をあけて排砂・排水を行い、そのための補強リブを拡張させることで全体構成と水の流れを作り、ロケーションを生かした人の滞在する場(イベント、展示施設、宿泊施設、当時の風景を体現する滝の間やシアター等)を付加することで地域の有効な観光資源として活用する。水と共に流れていく動線は、水没した川と集落の関係性を再興する。そして壁面に設けた水盤は、汚れた土砂や水を濾過し、ある程度溜めることで水温の上昇も同時に図る。ダム湖を眺めながら訪れた人は、水の流れと共に水没集落のアイレベルに向けて下降しながらダムについて学んでいく。大きく跳ね出したスラブからは、都市へ向けて流れる水と様々な角度からのダム壁の傾斜とそのスケールを体感し、位置関係と共に過去の人々の賑わいに想いを馳せる。水没した当時の風景を臨むことはできないが、この場所での一連の空間体験によって過去の記憶に想いを馳せるきっかけを作る。貯めた水を放流するように貯まった想いを未来に継承することがさらなるダムの長寿命化に繋がると期待している。

作品イメージ

Profile

略歴

2000年 東京都葛飾区生まれ

2023年 昭和女子大学 生活科学部 環境デザイン学科 卒業

2025年 昭和女子大学大学院 生活機構研究科 環境デザイン研究専攻 修了