私は学部4年の卒業設計で多様な生活スタイルを持つ人が、他人同士だからできる距離や関わり方があると考え「コラボレーションハウス」という暮らし方を提案した。その時に、集まって住む暮らしの中で、個室と共用部が壁一枚で、個室から共用部に突如として切り替わることに疑問を抱き、個室に対して共用部に入る前の気持ちを準備する空間を設計した。本設計ではその考えを発展させ、都市で暮らす人々の住まい方と家族のあり方、個室と共用部の空間の対比から生まれる個室の孤立に焦点を当て提案する。現代のシェアハウスでは個室同士の関係性や共用部と外部との関係が希薄であり、個室と共用部の対比も明確になっている。本設計では、シェアハウスの個室に付随する個室+(プラス)を設けることにより、個室同士や個室と都市を緩衝する。個室+(プラス)は個室同士の距離をつくり出すだけではなく、自分の個室にある内面を見せることを選択することができ、気配を伝えて集まって住む安心をつくり出す空間である。現代に生きる人々はこうした共用部や個室のあり方もが融合するような複雑な社会で生きていると考え、そのような複雑で多様な空間を共有するシェアハウスを提案する。