Gallery作品詳細

陰翳の綾を用いた建築
- 日本美術のための小さな美術館 -

氏名
杉江 隆成
所属
東海大学大学院
工学研究科 建築土木工学専攻
研究室
野口直人研究室
作品概要

私は京都にある詩仙堂を訪れたとき、薄暗い室内において実際に存在している空間以上に計り知れない空間を感じた。その体験から空間に捕らえどころのない多様な印象を想像させるそのメカニズムに興味を覚えた。

谷崎潤一郎の随筆。陰翳礼讃の中に出てくる言葉「陰翳のあや」。綾とは物体の表面に現れた、その物体とは異なる様相のことを指す言葉であるが、陰翳によって様々な陰の濃淡を生み出す詩仙堂をはじめとした日本建築は空間に「陰翳の綾」をつくっているのではないかと考えた。

これは京都詩仙堂での体験から導いた日本建築における陰翳の綾を現代的な建築空間へ応用することを目的とするものである。

まず、日本建築の陰翳を生み出す要素を抽出し、「半透明」「細かな凹凸」「深さ」の3つのタイプを導き出した。そこから空間の構成へ応用が可能な「深さ」を主に用いて設計していく。屏風や掛け軸などの日本美術は元々、日常の調度品としてほの暗い日本建築の中にあり、その中でもっとも美しく見えるようにつくられている。そこで陰翳の綾を用いた日本美術のための小さな美術館を提案した。

陰翳の綾を用いた建築は小さく単純な構成でありながら、一歩歩くと突然暗闇の中にいるという状況が生まれたり、ふと気づくといつの間にか空間に対する印象が変化していたりと、現代の「明るい建築」にはない繊細で豊かな空間を生み出す。

作品イメージ

作品ファイル

プロフィール

  • 略歴
    1996年
    神奈川県横浜市生まれ
    2018年
    東海大学 工学部 建築学科 卒業
    2020年
    東海大学大学院 工学研究科 建築土木工学専攻 修了