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数値解析による都市形態の熱環境分析 ―渋谷マスタープランの再考―

氏名
Hora Ratul
所属
東京理科大学大学院
工学研究科 建築学専攻
研究室
坂牛研究室
作品概要

背景
 近年、都市化によるヒートアイランド現象が深刻な問題となっている。熱環境として都市形態のみを考える時どのような形態が良いのかという疑問に対して都市形態とそれによる熱環境の検討が本研究の目的である。
都市形態
 都市形態自体は非常に複雑であり、比較するための定義とグループ化が必要である。そこで本研究での都市形態をアーバンフォームと定義する(都市に存在する建物はその建物の平面積、表面積、高さ、体積、中心からの距離と角度によって定義できるが、それぞれの変数の平均、標準偏差、合計と集計を算出して得られた18個の指標によってアーバンフォームを定義した)。そこから、この指標をもとにクラスター分析を行い、35個のアーバンフォームを六つのタイプ(Mega-Bulky, Semi-Bulky, Mega-Lean, Sprawled-Swarm, Macro-Swarm, Micro Swarm) に分けた。
熱環境
 次に全てのアーバンフォームに対して風と日射のシミュレーションを行い、都市外皮の熱流束を一日中3時間ごとに計り、時間による熱流束の変化のグラフを得た。従来の熱環境を評価する指標であるヒートアイランドポテンシャルは主に熱流速の最大値を比較対象としている。しかし、熱流束はその時間のみを比較しているため、一日中の変化も把握出来るように熱流速を時間で積算し、熱量を比較対象とする。
結果・結論
 平均熱流束、全体熱量と単位体積の全体熱量のグループごとの平均を比較した結果、Mega-Leanグループの値が一番小さかった。結論として、太陽からの熱放射と形態のみに着目した場合、Mega-Lean(密集して細長い建物の集まり)がヒートアイランドを起こすポテンシャルが低いといえる。
提案
 以上の分析より得られた知見に基づき渋谷再開発の2027年マスタープランの建物体積と用途を抽出して熱環境に適したアーバンフォームの提案と検討を行なった。現状、2027年のマスタープランと自身が提案したアーバンフォームの熱環境比較を行った結果、2027年のマスタープランの場合は最大熱流束も全体熱量が現状より高かったことがわかった。つまり、今の計画通り進むとヒートアイランドの起こりやすさが上昇してしまう可能性がある。しかし、自身の提案の場合、2027年のマスタープランと同じ体積であっても、最大熱流束も全体熱量も30%以上現状に比べて低下していたため、ヒートアイランドが起こりにくい都市形態となっていることが確認できた。本研究で都市形態とそれによる熱環境の分析によってヒートアイランド現象が起こりにくい都市形態を抽出した。これに基づいて2027の渋谷マスタープランの巨大スケールに対して新しい、より熱環境に良い、都市形態の提案を行った。


キーワード:数値解析、都市形態、アーバンフォーム、熱環境、ヒートアイランド現象、ヒートアイランドポテンシャル、渋谷、マスタープラン

作品イメージ

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プロフィール

  • 略歴
    1992年
    インド生まれ
    2014年
    中央工学校 建築設計科 卒業
    2016年
    信州大学 工学部 建築学科 卒業
    2018年
    東京理科大学大学院 工学研究科 建築学専攻 修了