けもの道
―現代における時間の感覚と価値観の再考―
氏 名
戸井田 雄
所 属
武蔵野美術大学造形学部建築学科
研究室
作品概要
現代社会の時間の流れは速過ぎて、泡沫の如く様々な事やモノが飛び交って行く その事やモノの本当の意味や、見えない価値を考える間もない速さで自分が何を見ているかも、自分が見てるモノが何であるかも分からない速さで
そんな時間の中における在り方を、自分が6年間いた工房に探し求めた

今回の制作において、私が着目したのは床面に付けられた『傷』であった。これらの傷は一般的に『汚れ』として分類され、そこに意味を見いだされる事は無い。

ただ、何故その傷がそこにあるのか考えると、そこには理由が見えてくる。

入学した時からあったデスクの跡、木材を運ぶ際に付けられた擦り傷、先輩がいつも作業していた場所には、無数の傷がその記憶を残していた。

その様な目で見ると、傷にもリズムがあり、『感情』があった。傷とは何かの『跡』である。それは誰かの『存在の証明』であるとも言える。

その存在は生活の中では認知されない、そしてその『証』が大切かと言う事も証明などされていない、ただ私はそのような世界観を大切に在りたいと思った。

それは無駄な事かもしれない、しかし価値観や道徳すら流動する現代社会においては、既成の判断基準に依存せず、自らを信じ、その証明を行う行為が無駄とは思えない。


もう一度見てみようと思う。その意味を、理由を、ゆっくりと考えられる早さで。
もし、その行為が無駄だという結論に至っても、それは決して無意味な行為では無いと、私は思う。
作品01
作品02
(pdf 480KB)
戸井 田雄
Profile
武蔵野美術大学造形学部建築学科 土屋公雄ゼミ卒業  卒業制作「断面」
武蔵野美術大学大学院造形研究科デザイン専攻建築コース 立花直美ゼミ修了


現在 Space of Five株式会社所属
個人HP http://www016.upp.so-net.ne.jp/i-u/

● 受賞歴
Tokyo Designer’s Week 2008 学生作品展において
  個人賞Premio優秀賞受賞(小名秀幸との共同制作)
あわら市環境アートコンペ入選
Copyright (C)The Japan Institute of Architects Kanto-Koshinetsu Chapter 2007
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