1.最近の駅舎におけるエレベーター事情
(1)既設駅におけるエレベーター設置のニーズ
 高齢社会の進展や障害者の社会参加機会の増大に伴い、高齢者や障害者などの移動に制約のある方が駅を利用する機会が増えています。しかしながら、駅構内の垂直移動手段は階段である場合が多く、一部の駅にエスカレーターやエレベーターが設置されて来ているとは言うものの、まだ移動に制約のある方が利用しやすい状況には至っていない所が多いのが現状です。
垂直移動設備の内エスカレーターは、連続して多くの人を運べる設備ではありますが、車いすなどの移動に制約のある方にとっては必ずしも利用しやすいとは言い難く、基本的には駅職員の解除を要します。一部では車いす使用者のための車いす用ステップ付エスカレーターが設置されていますが、エレベーターに比べ障害者の利便性に劣ります。
 このため移動に制約のある方にとって極めて利便性の高いエレベーターの設置が不可欠ですが、鉄道事業者にとっては既存のエレベーターでは設置場所やコストが障害となって、ごく限られた駅にしか設置されていないのが現状です。したがって、移動に制約のある方にとっても利便性が高く、かつ省スペース・低コストで既設駅に設置しやすいエレベーターのニーズが高まっています。
(2)交通バリアフリー法の制定
 このような中、平成12年11月15日に、『高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の推進に関する法律』いわゆる交通バリアフリー法が施行されました。交通バリアフリー法は、(1)公共交通機関の旅客施設及び車両等のバリアフリー化を推進すること、及び(2)旅客施設を中心とした一定の地区において、市町村が作成する基本思想に基づき、旅客施設、周辺の道路、駅前広場等のバリアフリー化を重点的かつ一体的に推進することを内容としたもので、同法に基づいて公共交通事業者等が旅客施設や車両等を整備・導入する際の基準である移動円滑化基準が定められています。  この交通バリアフリー法に基づき、国土交通省では既設駅に対する段差解消施設(エレベーター・エスカレーター等)の設置を推進しており、段差(高低差)5m以上で、かつ1日の乗降客5000人以上の駅(2010駅)を対象として、2010年までの設置を目指しており、最近では、特に既設駅舎のリニューアルにおける、エレベーター設置が盛んに行なわれています。(図1−2)