都市デザインの話
都市の街並みに欲しい「空間・装い」への想い


住友軽金属  鈴木 稔




 わが都市デザイン部会活動の底流を流れている,コモンセンスとして“人・生活・都市”の視点がある。街との係わりで,最も身近に触れ目につく通りを主体とした,街並みの装いについて想いを語りたい。
 欧米都市(昨年訪れた南米も含め)の中心市街地には,どこを訪れても人々の憩いの場である広場や公園スペースが豊富で,心地よくひと休み出来る仕掛けがたくさんある。新緑の季節は特に自然の息吹を感じ,夏の陽射しを思い思いに伸び伸び日光浴を楽しむ光景が眼に浮かぶ。我が国と気候や文化が大きく違うことはその通りだが,都心の梅雨空の下べったりした肌を静めたり,急に初夏の陽射しが現れた時木陰を求めるが,心地よいスペース・ベンチも見当たらない。しかたなく身近なコーヒーショップに涼を求めて逃げ込んでしまう。高温多湿の日本気候に合う半屋外型の憩いの場(昔公園でくつろいだ茶屋的空間)・現代版茶屋が都心に欲しいと感じている。商業施設と一体となったモール街には時折見られるようになったが,普通の街並み・通りにこそ欲しいものである。
 オゾン層破壊の環境汚染・高齢化社会を迎え“車社会から人にやさしいまちづくりへ”と言われているが,公共輸送・特に身近なバスシステムの改善が早急に出来ないものかと利用する市民として考えさせられる。低床式バス導入は耳にするが,バス停までの歩道整備はまだまだ未改善。マイカーを減らし公共輸送の利便性を高めるため,朝夕のバスレーン確保は目にするが路上駐車が一向に減らず道は渋滞している。利用率が上がる運行システムを道路管理者と一体となった改善が望まれる。
 またハード面で必要不可欠と想うのがバス停(バスシェルター)の改善。  街並みの装いにも影響大である。雨も多く・高齢者も更に多くなる(現状利用者も高齢者が多い)のに,昔ながらの看板だけのバス停・傘が離せない小さな屋根付・通りの周囲はきれいな外観の建物なのに錆びの目立つバス停。何はさておき,利用者や通りを行き来する人々に対して,気の利いた装いが出来ないものか。小さな予算で大きな効果が,期待できる街並み整備事業ではないだろうか。
 民営・公営の違いが有るだろうが,顧客満足度・ユーザーフレンドリーなシステムに向かっている社会の流れで取り残されている。街並みの背景と競わず・爽やかで・永く愛される,人にやさしいバスシェルターを街にしつらえたい。あるゆる関係者(建築家も大いにデザインして欲しい)の想いで,人・生活・都市が豊かになるようにまず足元から整備したいと想う。都市デザインの視点から,景観との調和・通りの装いについて考えを述べようとしたが手前の入り口で止ってしまったことを付記します。

 

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