都市デザインの話
「パサージュガーデン渋谷」の街区景観デザイン
        7建築家の協働によるデザイン調整


日本設計第3建築設計群プロジェクト部長  大野二郎


事業のコンセプト

 「パサージュガーデン渋谷」計画は平成7年7月,日本国有鉄道清算事業団「渋谷駅付近(南側)(北側)」の建物提案方式に企画グループとして応募し採用され,レールシティ西開発株式会社とともに計画をすすめた。

 当計画は未来志向企業の中枢機能の集結をめざし,渋谷の新しいビジネス拠点の創出を提案した。進出企業は渋谷駅南地区のポテンシャルを最大限生かす企業構成とし,21世紀に相応しい実力を持つ安定した企業の中枢機構で,確実かつ永続的な運営を行い,地域と共に発展する企業7社を投資家として結集した。


開発の基本コンセプト

 「パサージュガーデン渋谷」計画は統一感のある都市景観の整備により,渋谷の新しい顔に相応しい,質の高いビジネス環境を自ら創出し発展させる事を目指している。

(1)新しい渋谷のイメージの形成。
 商業・娯楽のイメージの強い渋谷に対して,新しいビジネス拠点の形成をめざす。

(2)新しい都市景観の創出(パサージュガーデン)。
 鉄道に沿ってカーブした細長い敷地に,複数の建物を統一感をもって配置し,各敷地前面に歩道状
 公開空地を設置することで,新しい街区景観・街路景観を創出する。

(3)複合的街区の魅力の創造。
 複数の企業が共同して調和のある街づくりを行い,事業および都市景観での相乗効果を生み出し,
 地域の発展と魅力を創造する。

「パサージュガーデン渋谷」計画

 パサージュには,路と路を結び人が歩く空間的「通り」 の意味と,音と音を結び付ける「経過音」の意味が込め られている。計画された大通りではなく,都市に残され た隙間空間の利用が今後重要になるであろうことと,音楽が和音とメロディの美しい繋がりから成り立つつながりように,建築ごとの個性を生かしがらも,新しい連続的な建築群による調和のとれた都市景観形成の願いと試みが意図された。


デザインコントロール

 「パサージュガーデン渋谷」計画ではマスターアーキ テクトやマスターデザインコードによるデザインコント ロール方式をあえて採用していない。強制的なデザイン コードがしばしば建築家の可能性と個性を奪ってしまっ ていること,渋谷という魅力的な都市との連続性の中で 場所を意識し考慮することは当然であり,幸いにもそのような建築家グループが指名されていること。そこで建築群のデザイン調整を日本設計が中心となって,設計者会議のなかで提案し検討しながら進めていった。(新居千秋都市建築設計事務所,プランテック,NTTファシリティーズ,日本設計)

パサージュゾーン

 各建築家のデザインを認識しながら,調和のとれた都市景観にとって重要な人間の視線からの範囲をパサージュゾーンとして空間指定し,デザインの連続的な調和を図ることとした。パサージュゾーンは道路境界線から6.5メートル,高さ2層分の空間範囲と設定した。さらに道路境界線から3メートルの範囲を歩道状空地として公開し,区歩道1メートルとともに,シラカシの街路樹とポルフィード舗装により連続的なパサージュガーデンの骨格を形成した。

 この歩道状空地は開発行為により設定されたものであるが,敷地内であるのでエントランスキャノピーの設置や歩道仕上げのエントランスデザイン化が可能となった。パブリックとプライベイトの相互嵌入が,新たな都市開発の手段と新たな街路景観の創出を可能にさせた。

 現在渋谷駅の新請願改札口およびホテルの工事が進行している。渋谷の新しい顔として是非一度訪れることをお勧めしたい。またフジテレビ系列でトレンディードラマの舞台として1月から放映中である。

 

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