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空間における闇の演出手法に関する提案
- ロラン・バルト『表徴の帝国』と谷崎潤一郎『陰翳礼讃』を通しての空間試行 -

氏名
佐藤 春花
所属
前橋工科大学大学院
工学研究科
建築学専攻
研究室
松井淳研究室
作品概要

 日本の夜は明るすぎる、と文豪・谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』で嘆いた のは 1933 年。彼は光と闇が綾なす陰翳の機微を無限の色彩と捉え、日本 の文化は闇と光が作り出す陰翳のゆらめきにある、翳は単なる陰影では なく、かげり移ろいであるとした。かげりうつろい、曖昧に変化し続け る、あるいは薄暗さに包まれた闇の空間は、照明技術の発展した明るす ぎる現代では得られない、五感を使い空間の輪郭を手探りで獲得してい くような身体感覚を私たちに与えてくれていたのではないかと考える。 しかし、現代において闇というものは『陰翳礼讃』に描かれたものとは 違ったかたちをとってあらわれ始めているという事が伺える。そのため、 柱や梁、深い庇によって成立する、日本の伝統的な空間構成に固執せず、 単なる暗闇ではない〈闇的体験〉を試行するアプローチとして、闇の空 間を創り出す条件にあたる部分を、まずは言葉により規定することで、 手法及びそれを用いた設計提案を行った。
本設計ではケーススタディーとして、こども園などの複合プログラムを 選定し、闇的体験を持つ空間が遊びを通して子供が得る感覚体験の背景 として、それを支援するものとなるという考えのもと、建築的遊具とい う機能を持った、闇的体験の得られる空間の設計を行った。

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