作品詳細

陰翳礼讃的建築の設計
- 谷崎潤一郎「陰翳礼讃」に見られる空間記述と「ブルーノ・タウト」の言説との参照から -

氏名
大木 翔
所属
東洋大学大学院
福祉社会デザイン研究科 人間環境デザイン専攻
研究室
櫻井義夫研究室

作品概要

「美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える」
『陰翳礼讃』谷崎潤一郎より引用

『陰翳礼讃』は日本独自の美しさをその陰影美の中に見だし、多方面の文化を対象に書かれた谷崎潤一郎による随筆である。建築もその一つとして描写がされているが、その陰影とは一体どのようなものなのか。本設計は陰翳礼賛に描かれた空間像の陰影美を、実体を持つ建築として体現する試みである。

谷崎が専門的には建築に精通していないなどの理由から、描写された空間像をより建築的に探る手掛かりとして、陰翳礼讃とほぼ同時期に日本で活躍した外国人建築家ブルーノ・タウトを選定し、彼の言説と陰翳礼讃の引用との比較分析を行った。分析により得られた両者の共通点を設計の中に反映し、西洋の近代主義を背景に持つタウトによって評価された、陰翳礼讃的な日本の陰影美の実体化を試みた。

その方法として、分析結果を前提とした「縁側」、「庇」、「壁」という三つの建築構成法を導き出し、それを基に建築の設計を行った。設計に際しての諸条件については、陰翳礼讃と同様に谷崎の代表作である『痴人の愛』を参照し、物語を建物内で補完する計画とした。これらを基に敷地を設定しない架空の住宅を設計した。

この住宅は二つの文学作品のイメージを統合した谷崎潤一郎的な空間像であると同時に、陰翳礼讃に描かれた日本的建築空間に近代の目を通して再構成した姿である。

陰翳礼讃的建築の設計
- 谷崎潤一郎「陰翳礼讃」に見られる空間記述と「ブルーノ・タウト」の言説との参照から - 陰翳礼讃的建築の設計
- 谷崎潤一郎「陰翳礼讃」に見られる空間記述と「ブルーノ・タウト」の言説との参照から -
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