作品詳細

After De Chirico

氏名
松原 徹弥
所属
多摩美術大学大学院
美術研究科 デザイン専攻環境デザイン科
研究室
岸本章研究室

作品概要

絵画に描かれた建築は常に建築そのものではなく、実物になりえない二次元上の複製である。ただそこにはおそらく二つあると考えている。それは背景にすぎないものと建築になりえているもの。もとを辿れば、ルネサンス期の絵画はパース、透視図法の発見とともに起き、絵画と建築が共に現象する地点にあった。だからこそ、二次元平面である絵画上の建築に建築的な強さを備えているものも少なくない。絵画と建築が完全な別物となった近代以降は、パースとはあくまでも伝達物であり、建築性を平面に定着させているものではない。この制作は近代以降に、それでも残る建築的な強さを備える一枚の絵画から一つの建築を立ち上げてみようとする試みである。それは一人の建築家を模倣するように、100年前の建築を参照するように、一枚の絵画を巡って「新たな建築」を構築するための一連の試行実験であった。

対象に選んだのはキリコの「通りの神秘と憂愁」である。この絵画を建築へと媒体、次元変換するため、分からない部分の方が圧倒的に多い。そのため描かれていない部分をいかに構築するかということに神経を注いだ。絵画的なスタディ、レリーフのスタディという「トレース」から、透視図法の逆算という「解析」を経て、描かれていない部分を構築した。そのような手探りのプロセスと平面から建築へ変換する運動を、キリコに敬意を表し、「After De Chirico」と呼ぶことにした。

プロフィール
松原 徹弥

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