古い建築や街並みを残そう
建物保存について



建築家の仕事は、たんに新しく建物をつくることだけではありません。歴史的文化的に価値の高い建物や街並みを、いかに遺し 将来に向かって生かしていくかを考えるのも、大切な仕事です。
JIAでは、こうした保存問題についての委員会があり、重要な建物について国や自治体に保存の要望を出すなどの活動を行っています。また、古民家の再生などに取り組んでいる建築家も大勢います。このページでは、そうした活動をお伝えしていきます。

国際文化会館の保存問題

直近の例として、前川國男・坂倉準三・吉村順三という三人の巨匠(いずれも故人)の設計による国際文化会館の建物と その庭園についての 保存要望書、そして、関連した保存問題委員会の議論や動きを ご紹介します。

保存要望書は8月5日に、所有者である財団と、所在地である港区の原田区長とに提出されました。その文面を下に(JIA本部ページから)再掲しておきます。
本部ページ 〜
http://www.jia.or.jp/whats_new/2003/08bunkakaikan.htm


要望書提出の後、10月27日に 港区長ならびに区役所の所轄の方々に、保存担当理事と委員会メンバー2名が面談をしました。
感触としては、会館の敷地を含んだ街区全体の再開発計画と矛盾しない形での保存の手法を、JIA側から概略の形ででも提案できるかどうか、これがJIA側に課せられた難題のようです。
再開発計画の中に、会館の一部(庭に面する最も空間的な部分)を そのまま入れ子状にオリジナル保存する方法などを、今後 多方面の方々と共に模索していく可能性や状況を、委員会を中心に作り出していくことが出来るようにしたいと考えています。
建物保存について
国際文化会館

平成15年8月5日

財団法人 国際文化会館
     理事長 嘉治元郎 様

社団法人 日本建築家協会(JIA)
関東甲信越支部 支部長 松原忠策
保存問題委員会委員長 小西敏正


国際文化会館の建築ならびに庭園の保存についての要望書

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 貴財団におかれましては、永きに渡り国際文化会館の運営に尽力されて来られたことに、当協会より深く敬意を表します。
 私ども日本建築家協会では、建築をはじめ造園や街路施設等 それぞれの意匠や空間が 都市文化を実体的に形成するという重要な役割を担っていると自覚し、さらに、個々の建築物が永く使い続けられ活用されることによってはじめて、その都市文化に歴史的な奥行きがもたらされ、醸成がなされると考えております。この点で、貴財団が会館の建物並びに庭園をみごとに維持されてこられましたことにつきましては、ここに重ねて敬意を表する次第です。

 さて、ご高承のとおり 国際文化会館の旧館部分は、日本の現代建築史上の最も高名な巨匠のうち3人もの協働設計によるものであり、その意味で前例も後例も無く、またモダニズムの建築空間を由緒ある日本庭園と巧みに調和させるというデザインの妙を実現した、貴重な建築作品であり、日本建築学会賞受賞作ともなっています。

 このたび、貴財団が諸般の事情から、周辺の地権者の方々と共に再開発計画をお考えということを耳にし、この貴重な作品や由緒ある庭園が無くなる可能性のあることを知り、当委員会では何とかこれらの現地保存をお願いできないものか、議論を重ねてまいりました。

 前川國男・坂倉準三・吉村順三、この3名の建築家が、当協会の前身(旧 日本建築家協会)発足期の精神的中核に居たこと、また、戦後の困難な時代にアーキテクトの社会的地位を確立せんと奮闘したことに想いを馳せれば、これら先達の残した「個性の融和協調」の実験例を後世に残し伝えることは、貴財団の理念に、その最も崇高な部分で合致するものと確信いたします。

 すなわち、貴財団が日本と世界の人々の文化交流によって国際相互理解を促進されてこられた、まさにその一環として、日本が世界に誇りうる建築家3名の協働作品と美しい庭園とを有機的な一体として現地保存・活用して頂くことは、建築やその周辺芸術が持つべき文化的価値を世代を超えて紹介し、あるいは広く世界に日本の近現代建築史の一断面を伝える、もっとも有効な手段と考えられるからであります。

 わが国の人口の減少を将来に控えて「スクラップアンドビルド」がもはや物理的にも時代の要請にそぐわなくなりつつある今日、貴会館の建物と庭園を現地保存して頂ける技術的可能性は、十分残されていると思量し、ここに表記の要望を重ねてお願いする次第です。

 私どもと致しましてもそのための協力は可能な限りさせて頂きたく、お声をお掛け下されば幸いに存じます。

敬具



平成15年8月5日

港区長  原田敬美  様

社団法人 日本建築家協会(JIA)
関東甲信越支部 支部長 松原忠策
保存問題委員会委員長 小西敏正

国際文化会館の建築ならびに庭園の保存についての要望書

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 区長におかれましては、都市・街並み・建築に対する深い造詣・理解のもとに行政を導かれていることに、深く敬意を表します。
 私ども日本建築家協会では、建築をはじめ造園や街路施設等 それぞれの意匠や空間が 都市文化を実体的に形成するという重要な役割を担っていると自覚し、さらに、個々の建築物が永く使い続けられ活用されることによってはじめて、その都市文化に歴史的な奥行きがもたらされ、醸成がなされると考えております。

  さて、貴区内にあります国際文化会館の旧館部分は、ご高承のとおり 日本の現代建築史上の最も高名な巨匠のうち3人もの協働設計によるものであり、その意味で前例も後例も無く、またモダニズムの建築空間を由緒ある日本庭園と巧みに調和させるというデザインの妙を実現した、貴重な建築作品であり、日本建築学会賞受賞作ともなっています。

 また、その周辺は緑の多い、都心あって希に見る環境の良い地域で、江戸時代から受け継がれた歴史の匂いも残っており、貴区として ぜひ大切にして頂きたい佇まいを湛えています。

  このたび、所有者である(財)国際文化会館が、諸般の事情から、周辺の地権者と共に再開発計画を考慮中であるということを耳にし、この貴重な作品や由緒ある庭園が無くなる可能性のあることを知るに至り、当委員会では何とかこれらの現地保存ができないものか、またいかにしたらこの地域の佇まいを保全できるか、議論を重ねてまいりました。

 前川國男・坂倉準三・吉村順三、この3名の建築家が、当協会の前身(旧 日本建築家協会)発足期の精神的中核に居たこと、また、戦後の困難な時代にアーキテクトの社会的地位を確立せんと奮闘したことに想いを馳せれば、これら先達の残した「個性の融和協調」の実験例を後世に残し伝えることは、財団としての国際文化会館の理念に合致するのみならず、これらを擁する地域全体の文化施策としても国際的な評価を得るであろうと確信いたします。
 すなわち、日本が世界に誇りうる建築家3名の協働作品と美しい庭園とを有機的な一体として現地保存・活用されるべく 貴区が主導的な役割を果して頂くことが、建築やその周辺芸術が持つべき文化的価値を世代を超えて紹介し、あるいは広く世界に日本の近現代建築史の一断面を伝える、もっとも有効な手段と考えられるのです。

 わが国の人口の減少を将来に控えて「スクラップアンドビルド」がもはや物理的にも時代の要請にそぐわなくなりつつある今日、国際文化会館の建物と庭園を現地保存する技術的可能性は、十分残されていると思量し、ここに表記の要望を重ねてお願いする次第です。
 また同時に、国際文化会館を保存する事で、かえって地域内に周囲の環境を阻害するほどの超高層化や大規模化した建物が建てられることに至らないよう、関係各方面をご指導頂けるよう、これについてもよろしくお願い申し上げます。

 私どもと致しましてもこれらのため、可能な限りの協力・提案をさせて頂きたく、お声をお掛け下されば幸いに存じます。

敬白

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