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アーバントリップ実行委員会


JIA第55回アーバントリップ見学会のご報告



実施日: 2007年11月28日(木)
テーマ: 「アントニン・レーモンドの建築を訪ねて」
見学先:

「群馬音楽センター」(1958年 DOCOMOMO20選作品)
「高崎哲学堂(旧井上邸)」(1952年 レーモンドの麻布の自邸と双生児)
「立教大学新座キャンパス」

・ 立教高校 聖パウロ礼拝堂(1963年)
・ 立教大学新座新キャンパス(設計:日建設計)


「群馬音楽センター」
  特別講師:三沢 浩 氏(三沢建築研究所主宰)


「高崎哲学堂(旧井上邸)」
  特別講師:三沢 浩 氏(三沢建築研究所主宰)




「立教大学新座キャンパス」
  特別講師:三沢 浩 氏(三沢建築研究所主宰)
  立教新座新キャンパス説明:日建設計東京本社設計部 赤川鉄哉 氏



朝8時3 0分予定通り日比谷をバスが出発。車中で三沢浩氏から、レーモンドは自分の考えに非常に厳格で、担当者が意に沿わない図面を書いてくると原図を破いてしまったことなど、興味深いエピソードや解説を伺いつつ、一路群馬へと向かった。

インターを降り1 5 分ほど走り高崎市街に入ると、左前方に一目で群馬音楽センターだと分かるコンクリート折板構造で、エッジの効いた、力強く美しい造形物が目に飛び込んできた。彫りが深くシャープな陰影、快晴の青空に白く反射した屋根と、連続した折板のエッジが生み出す鋭いコントラストが、強烈なインパクトを放っている。レーモンドは常に建築はsimple, natural, economical, direct, honestでなければいけないという信念を持っており、これを「レーモンドの設計5原則」といい、その5原則にたったうえで、建物は力強くなければならない、と事務所で常に言っていたそうである。私はこの考えは時代を超えて普遍的な原則だと思う。この建物は当時群馬の資産家であった井上房一郎が、高崎にオーケストラを結成し、その本拠地としてこのホール建設を計画し、井上の呼びかけで、ホールの建設費の約1 / 3 が市民の寄付でまかなわれた。レーモンドは設計に当たり、次の三つの原則を示した。第一に市民の寄付を基にした建築であるから、無駄のない長寿命建築とすること。第二に民主主義に則り、舞台と客席の一体化を図ること。第三には城址という敷地環境に配慮し、建物の高さを抑えること。それらの観点から、最大スパン6 0 メートルのコンクリート折板構造を選択し、施工上仮枠の反復転用も考慮に入れ、各折板面は同一寸法に統一させた。ホールの内装も厳しい予算の中、レーモンドの原則に則ってデザインされ、まさに、この建物はレーモンドの建築思想を完璧に具現化した代表作と言える。

次に高崎哲学堂(旧井上房一郎邸)を見学した。敷地の周りはマンションが建ち並んでおり、塀に囲われ緑に覆われた敷地に建っている。この建物はレーモンドと深い付き合いのあった井上房一郎が、麻布にあったレーモンドの自邸を訪れた時に、その住宅に惚れ込み自邸をつくるにあたり、東西を反転し、アトリエを和室に変更した他は、ほとんどそのまま再現した住宅だそうである。外から見ると、一見日本家屋そのままのように見える。しかし、中にはいると丸太にはさみ梁のシーザーストラスによる架構、天井に剥き出しの空調ダクト、暖炉など西洋のものが混ざり合って作られている。日本的空間や素材と、洋風の靴履きの生活を融合させた、レーモンドスタイルと呼ばれる住宅である。それは庭や自然と、室内が繋がった一体の空間を作り上げている。

次に、新座市に移動して立教大学聖パウロ礼拝堂を見学した。レーモンドは当初のイメージでは純粋なシェル構造を想定していたが、構造上の問題からビームに鉄骨を入れることになったために、架構が巨大になってしまい、最後までレーモンドはこの教会が気に入らなかったそうである。ステンドグラスのデザインはノエミ夫人が担当している.

最後に新キャンパスを見学した。P C 圧着工法に制震装置を組み込み、構造表しのスッキリとした現代的な建築表現の美しい建物である。この現代的な建築もレーモンドの建築思想が時代を超え、D N A として受け継がれていることを、確信しつつ帰路についた。日本のモダニズム建築の原点ともいえるレーモンドの建築を体験でき、モダニズムの本質を見つめなおす有意義な機会であった。

(藤吉秀樹  藤吉秀樹建築計画事務所 Bulletin 2008 年4 月号より抜粋)

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