JIA Bulletin 2014年9月号/海外レポート

ル・コルビュジェを巡る旅
ヨーロッパ縦断建築ツアー

高田 典夫

高田 典夫


 2014年3月9日(日)〜18日(火)に「ル・コルビュジェを巡る旅」に行ってきました。地中海に面したニースから始まって、マルセイユ、ニーム、リヨンとフランスを地中海から北上し、途中、レマン湖畔、ローザンヌ、ベルン、バーゼルとスイスに立ち寄って、またフランスに戻り、ロンシャン、パリというルートで、ル・コルビュジェの作品を中心に、ル・コルビュジェが影響を受けた作品や、ル・コルビュジェから影響を受けた作品などを見て回るというものです。

 

 カプ・マルタンの休暇小屋は修理中だったけど、内部空間のスケールは心地いい。
 隣接するアイリーン・グレイの家/E1029は修復中で、あと数カ月で見ることができるかもしれないとのこと・・・こちらのほうも気になります。

 

 

 ル・コルビュジェがラ・トゥーレットをデザインする時に参考にしたル・トロネ修道院。3年前に訪れた時は、曇りでちょっと寒かったけど、今回は天気も良く、気持ちのいい午後のひと時でした。光の入り方が変わるだけで、空間の印象はガラリと変わります。ル・トロネの回廊は、少し歪んだ4辺形となっていることで、閉じられた空間なのに、動きを感じます。それに加えて、光の変化がさらに空間に魅力を加えています。

 

 マルセイユのユニテは、ひとつの都市として考えられた複合施設です。その多くの機能が失われてしまっているけれど、空間としての魅力は未だに衰えてはいない。今回、実際にお住まいになっている住宅の内部を見せていただいた。そのお話をうかがっていると、愛着を持って住み続けているということがよくわかって、羨ましく思いました。建築はこうやって使い続けていくことで残さないと・・・

 

 

 ラ・トゥーレット修道院は、一日中、光の動きを見ていたくなるような空間です。  ラ・トゥーレット修道院の中の食堂でランチを食べて、午後はフィルミニへ・・・

 

 

 文化と青少年の家をみたあと、サン・ピエール教会へ。この教会は、ル・コルビュジェの没後、完成された空間で、ル・コルビュジェがイメージした空間とは異なっているのかもしれませんが、内部空間は、感動的です。

 

 

 スイスに入ってレマン湖畔の「母の家」。内部空間も外部空間も、空間のスケールが心地いい。庭の樹が変わってしまって、佇まいがガラッと変わってしまいました。

 

 ローザンヌのローレックス・ラーニング・センター(設計:SANAA)は、体験してみないとわからないスペースで、写真で見ていた時の印象と随分異なり、内部空間も外部空間も、なかなか心地いいスペースが連続していて、不思議な空間体験でした。
 ベルンのパウル・クレー・センター(設計:レンゾ・ピアノ)は、建物も外構も・・・もちろん展示も素晴らしい!特に地階にある(とは言っても、光がさんさんと注いでいるような空間ですが)子供や身障者のためのワークショップ・スペースが抜群に良い。

 

 

 3度目のロンシャン・・・
 いろいろなことがあってなかなか実現しなかった新しい修道院(設計:レンゾ・ピアノ)は、斜面に埋められて、丘の上から眺めると、ほとんど存在を意識させないランドスケープとしての建築で、内部は、心地いいスケールの空間となっていて、開放感にあふれています。
 礼拝堂は、相変わらず、静かに・・・美しい!

 

 

 

 カレ邸は、アルヴァ・アアルトが母国外で設計した唯一の住宅で、青空に白い壁が映えます。居心地の良さは、スケールとプロポーションの巧みさから引き出されているのだろう。巨大な邸宅なのに、大きさを感じさせない。何回見ても素晴らしい住宅です。
 で、サヴォア邸・・・
 コルとアアルトの住宅を続けてみると、二人の生活観の違いがよくわかります。どちらがいいか・・・と聞かれれば、僕はアアルトかなぁ。でも、コルのサヴォア邸も美しい!

 

 

 ルーブルで昼食後、ツアーを離れて、希望者でパリ市内を散策・・・
 まずは、パレ・ロワイヤルでアートに参加して、ギャラリー・ヴィヴィエンヌで昔のパリを体験し、ユスターシュ教会前の広場でジャズを横目で楽しみながら、工事中のフォーラム・レアルの横を過ぎて、ポンピドー・センターへ。アートを楽しむ暇はなかったけれど、上までのぼって、パリの街を一望し、その後、マレ地区の入り口あたりをかすめて、RPBWパリ事務所を覗いて、サンルイ島へ・・・
 その後、シテ島をかすめてノートルダム寺院を横目で見て、左岸に入り、サンジェルマン大通りを散策。サンジェルマン・デ・プレで、とりあえず散策はゴール。
 パリという街は、やっぱり、歩いて楽しい街です。

 

 

 最終日、オザンファンのアトリエ、大学都市のスイス学生会館、ブラジル学生会館を見て、その後、プラネクス邸へ。
 午後は、ギマールのメトロの駅を見て、ラ・ロッシュへ・・・入場待ちの間に近くのマレ-ステファン通りへ。パリの中でも大好きなこの小路を構成しているアトリエ付きの住宅が魅力的です。ラ・ロッシュは外壁補修工事をしていて、足場しか見えない。しかもピロティには現場小屋が建っていて、外観は見るに堪えない。
 その後、シャイヨー宮から絵葉書のようなエッフェル塔の写真を撮って・・・ツアーはおしまい!

 

 

 駆け足で巡った建築ツアーですが、充実した10日間でした。
 このようなツアーを企画し始めてから、これで3回目。最初は、学生たちに普段見ることのできない異なった環境に身をおいてみることで、空間を感じる新たな視点が得られるとともに、普段見慣れている環境をあらためて見直すきっかけになるのではないかと考えていました。それに加えて、異なった環境を体験するには、一緒に行動するメンバーも多種多様の方がいいかと考え、学生だけではない一般の方々にも参加を呼びかけています。参加者は、一般の方の方が多く、学生は思ったほどは参加してくれません。でも、このような機会をできるだけ提供していこうと、また来年にむけて新たなツアー企画を進めています。
 乞う、ご期待!

 

〈アトリエテン 〉


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