JIA Bulletin 2011年11月号/海外レポート

2011 アルカシアベトナムフォーラムに参加して

 

上浪 寛
JIA 関東甲信越支部長 上浪 寛

 

 アルカシア(アジア建築家連合)ベトナムフォーラムに参加した。私たちのグループはJIAからの派遣でなく個人参加を全国に募った企画だったが、旧盆期間に当たるため少人数となり関東から総勢4名参加のツアーとなった。アルカシアは2011年1月から2年間、JIA会員の国広ジョージ氏が会長を務め、アジア17 ヶ国の建築家協会を束ねている。直前に迫ったUIA東京大会のプロモーションを兼ねて、国広会長を応援するためのベトナムツアーだ。ベトナムは南北に約1,600km の細長い国で、北から西側に中国、ラオス、カンボジアと接し、東側は東シナ海に面している。今回の旅は中国文化の影響が強い北部の首都ハノイに入り、中部リゾート都市ダ・ナンで開催のアルカシア会議に参加し、その後アメリカ始め西側文化の影響が色濃いホーチミンシティ(旧サイゴン)を訪ねて帰国する予定だ。

 

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 8月14日、直行便であれば6時間足らずのフライトだが、今回は成田から韓国仁川空港経の大韓航空便で、11時間かけてベトナム首都ハノイに向かった。成田−仁川は総2階建て航空機A380に搭乗し、その巨大さにびっくりする。アジアの重要ハブ空港となりつつある仁川空港は広大な空港で、見学する内に道に迷い危うく乗り継ぎ便に乗り遅れそうになる。夜遅くハノイ空港に到着。迎えのマイクロバスに乗り、夜遅くにもかかわらず混沌としたハノイ市内の交通状況を体験する。

 

 8月15日、今日は車で3時間ほど離れた世界遺産に登録されているハロン湾の観光に向かう。道路を走るのは1/3が車、1/3がバイク、1/3が自転車と言ったところ。こちらの車は皆、車線をまたいで運転し、センターラインもまたいで運転する。皆が皆、周りの様子を伺い自分の身の安全を見極めながら車、自転車、歩行者等の間を縫って運転している。バイクには生きた鶏を20羽程入れた籠を載せていたり、手足を縛った生きた豚や牛を積んでいたり、父母の前後に一人ずつ子供を乗せた4人乗り運転等にびっくりし恐ろしい思いをするが、次第にそれらの風景に慣れてくる。ハロン湾周辺はまさに風光明媚で、独特な景色を楽しめる。船に乗っていると至る所から水上生活者の船が寄ってきて果物を売りつけられる。屋形船のような船上でベトナム料理を頂くが、期待を大きく上回るおいしさだ。夜は評判の良いレストランでイメージ通りのベトナム料理を食べ大いに満足する。

 

 8月16日、朝、ホーチミン廟などを訪れ市内観光をする。午後、中部の街ダ・ナンへ到着。車、バイク、自転車共に少なく、リゾート地らしいのどかな風景だ。安いツアー料金の割に良いホテルで、各部屋の庭に小さなプールが付いている。早速、国広会長に電話を入れ会議場でもある隣のホテルで会う約束をする。夜は日本人20名でビーチサイドのレストランに繰り出し、大変おいしいベトナム料理を食べる。アルカシア会議で20名もの日本人が一堂に会して食事するのは初めてらしい。会食の終わりの挨拶で国広会長が「UIA Go!!」とハッパを掛ける。  

 

 8月17日、朝からアルカシア理事会にオブザーバー参加する。17ヶ国の理事達が議題を討議していく。アルカシアの機関紙について、アルカシアの表彰について、また新しいアルカシア加盟国について。新しい加盟国としてラオス、カンボジア、台湾が候補に挙がるが、ラオスのみが承認される。午後からダ・ナンの街へ出かけ、その後、市街地全体が世界遺産に指定されているホイアンを訪ねる。16〜17世紀に多くの日本人がこの地を訪れ、日本人町が形成されたことでも知られる。古い街並みには店舗やカフェの間に小博物館やギャラリーが点在しながら、裏の川沿いには頭がすりそうな低いテント屋根の大市場がある。日が暮れてくると川沿いに設けられたぼんぼりに灯が灯り、お祭が始まった。特設舞台上では地元の生徒達が「スキヤキソング」を唱っている。

 

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 8月18日、朝からアルカシア会議の本番だ。ベトナム副首相と建設大臣のスピーチに始まり、L.Cox UIA会長、そして国広会長のスピーチでフォーラムが開幕した。目前に迫ったUIA東京大会のプロモーションの機会が与えられ、リーフレットを配る。今回、東北関東大震災を受けて、各国の災害についてプレゼンテーションが行われる。日本からはJIA会員の岡部氏がJIA活動について良く整理した報告をされた。夜にはビーチサイドの会場でFriendship Nightが開催され、17ヶ国全ての参加国団体によるパフォーマンスが行われた。十分に練習を重ねた跡がうかがわれるパフォーマンスもあれば、我々のようにその場の付け焼き刃もあるが、皆それぞれに楽しんでいる。日本は岩村UIA副会長によるパフォーマンスに加え、事前にパキスタンや韓国、ベトナムといったグループに根回しして大勢参加による「上を向いて歩こう」を合唱する。東京大学内藤廣研究室を出て世界各国のコンペで軒並み賞を取り、国内外でビッグプロジェクトを抱えている30 代半ばのVo Trong Nghia 氏は、忙しい中フォーラム並びにフレンドシップナイトに最後まで参加されていた。ベトナム建築界の状況などざっくばらんな話を頂きUIA東京大会での再会を約束した。17国全てが終了する11時頃には料理もなくなり、若者達は三々五々夜の街に繰り出していく。

 

 8月19日、午前中は海に入ったりしてビーチでゆっくりと過ごし、午後ダ・ナンを後にしてホーチミンシティに向かう。ホーチミンシティの交通は、バイクの乗り方、車の走り方は相変わらず今までのまちと同じようなものだが、自転車がほとんどいない。高層の建物が多くそびえ立ち、「イカタワー」と呼ばれる烏賊の様な形をした超高層も建っている。ホテルのコンシェルジュから聞いた店に夕食を食べに行く。ベトナム料理は香草を多く使うが余り強くなく、日本人に馴染みやすい料理が多い。その中でもこの店の料理は繊細な食感と味で、今まで食べてきたベトナム料理とは一線を画す料理だった。

 

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 8月20日、今日一日でベトナムともお別れだ。ホーチミンシティから70km離れたクチトンネルを訪れる。長さ250km、深い所では8m、3層にもなっており、至る所に地下生活のための工夫や侵入者に対する罠が設けられている。サイゴン周辺の米軍を悩ませ続け、戦争を終結に導くために大きな役割を果たした。ベトナム戦争が終結した1976年から35年が経っている。その後も中国、カンボジアとの間で紛争が続いたが、現在のベトナムはアジアの中でも最も発展し、元気な国の一つとなっている。たった1週間の旅行だったが「元気の源」を充分堪能し、後ろ髪を引かれながら忙しい毎日が待つ日本への帰路についた。ご一緒した寺本さん、矢崎さん、高階さん、大変楽しい旅行をありがとうございました。

 

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〈(株)構想建築設計研究所〉


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